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コンクリートの上、あるいはリノリウムの上

音日でなにやら書きました。たぶん、自分の性癖を知ってる方には「ああお前らしいな」と言われてしまうような、なにか。


+++++++++++++++++++++++++++++


 面前を削れ気味のローファーの底が高速で通過して、その向こうには不敵に笑う顔。こいつこんなに体柔らかかったか? そう思ってる間にも、日向は回し蹴りを空振った勢いのまま一回転すると同時に姿勢を一段低くし裏拳とあわよくば肘で脇腹を狙ってくる。俺は脇を締めてそれを防ぐのを早々に諦めて、後ろに大きく一歩飛び退く。寸前まで自分がいたところにはもう日向の左足が踏み込んでいて、その体の影から右の拳が振り上げられる。体を右に傾けてギリギリのところで避けると、その右手に襟首を掴まれ地面に勢い良く転がされた。下になった右肩が痛いが間合いが取れるだろうと思いそのまま二・三回ゴロゴロと転がる。起き上がってふらつく体にぐっと力を入れて日向のいる筈の方を向くと、余裕そうにボクシングのステップを踏んでいた。しかも口笛つきだ。平衡感覚が戻るまで待ってくれているのか、それにしてもいらっとくるな。
「余裕だな」
「伊達に戦ってないぜ」
 相槌の代わりに口をぎゅっと結んだのが試合再会の合図だった。
 俺はクラウチングスタートの要領で地面を強く蹴って脚を狙いにいく。意図に気付いた日向は両手を組んで大きく振りかぶった。日向の動きを確認して、目標をがら空きの上半身に変える。たとえあれを振り下ろされても、背中ならダメージは軽微だろうと判断した。
 体格こそ同じくらいだが、やはり戦い慣れしている分日向の方が格段に速い。避けてばかりでは無駄に体力を消費して、自分の動きは鈍くなっていくばかりだ。ならいっそ一撃や二撃もらうのを覚悟で当てにいった方がいい。
 初めて積極的な姿勢を見せた俺に怯んだのか、日向の動きが一瞬止まる。それを見逃さずに懐に入り込むようにして鳩尾に重い一撃を入れる。おまけに中指の第二関節を突き出しておいた。反則くさいが元からルールなんてものは無い。見事に肋骨の無いところに拳が当たり、筋肉と内臓にめり込む感覚がする。そういえばこいつは、細くはないにしろ高松ほど鍛えてるってわけでもなかったな。
「…っあ」
 頭上から喉が引き攣った声が聞こえると共にさっきの両手が振り下ろされた。肩に当たるが予想通りそこまで痛いものではない。それより鳩尾に一発食らってまだ反撃できる方が不思議だった。伊達に戦っていないというのはこういうことか。だが決着まではあと一歩。今は俺の方が有利だ。
 ブレザーの裾から手を突っ込み目当てのものを手探りで探す。ベルト沿いに腰の後ろまで手を回せばすぐにそれは見つかった。日向も反撃を諦めて痛みに耐えながら同じことをしようとしているらしいが、生憎痛みで体が曲げられず俺の腰までは手が届かない。背中に爪を立てるばかりだ。予防線にと空いている方の手で鳩尾を圧迫してやると、面白いくらいに体が跳ねた。あ、とかう、とか短い悲鳴が聞こえてくる。これもなかなか楽しかったが、後でも十分堪能できると判断してさっさと決着をつけてしまうことにした。鉄の塊を日向のベルトから抜き取り体を離すついでに脚をかけて体を地面に転がす。完全に形勢逆転。すがすがしい面持ちで喉元に銃口を宛がう。
「ばぁん」
 ゆりから渡されたグロック17は火を噴かない。代わりに日向が苦し紛れに「参りました」と呟いて、整わない息と格闘している。
「…反則」
「ハンデだろ」
「ハンデにしては性質が悪すぎだ」
 息をするのも辛そうに鳩尾を押さえる日向を眺めながら、俺も息を整えた。何分くらいこうやっていたのだろう、すっかり汗をかいていて体が中から熱い。ブレザーを脱いで脇にやると、もう一度日向の方に向き直った。
「…大丈夫か?」
「お前が訊くか? それ」
 呼吸で胸を上下させる度に痛そうに眉を寄せる。あのくらいで内臓にまではいってないと思うが、痣にはなるだろうな、とぼんやり思う。
 そもそもこの試合を日々の鍛錬にと持ちかけてきたのは日向だ。自分の銃を相手から奪って急所に撃てば勝ち。勿論撃つ振りだが。それ以外のルールは存在しないので、さっきのような技も含めてなんでもありだった。勝敗はといえば俺の負け越しで、今日のような結果は珍しい方だ。
「日に日に戦い方がえげつなくなってるぞ、お前…」
 その内目とか狙われるんじゃねえかなってひやひやしてるんだぜ、との言葉に、こいつは本当に墓穴を掘るのが上手いなと感心する。
「もしやって見えなくなったら治るまでついててやるよ」
「はぁ!? 何言ってんだ…っ」
 こちらに注意を向けたために隙の出来た腹部を圧迫してやる。さっきの続きだ。ぐ、と拳で押し込むとびくびくと痙攣のように体を震わせる。奥歯を噛んで痛みと声を耐えているのがありありと判る表情でこちらを睨んでくる。それは煽ってるだけだといい加減気付かないのだろうか、こいつは。
「ぐっ…う、音無の、悪趣味!」
 恐らく今の全力だろうと思われる力で腕をつかまれ除けられる。さして痛くはない。しつこくすると機嫌を損ねるのであっさりと手を引いた。
 当の日向はといえば痛みを抑えるために浅く喉だけで呼吸していた。早い息が繰り返されるだけで、あまり状況が好転するとは思えなかった。だが、じわりと昨日の色事を彷彿とさせるその苦悶の表情は俺の口を閉ざすのには十分だった。
「なに、見てんだよ」
 じい、と顔を見つめてくる眼線に気付いたらしい日向が更に眉間に皺を寄せてこちらを見やる。導火線の残りは、一寸もあるだろうか。
「お前のそういう顔、すっげえ、そそる」
「変態」
 やさしくしてくれよ、と呟いた唇を乱暴に塞げば、諦めたように紫の双眸が閉じられた。


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手合わせと嗜虐心をくすぐられる音無さんが書きたかった。

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